Story
その日、私は四度目の死を体験した──
一度目は、転落死。
複雑骨折、命は絶対に助からない。
二度目は、中毒死。
あいつが差し出した飴玉には毒があった。
三度目は、失血性ショック死。
胸にねじ込まれた包丁は、正面から刺されたものだった。
四度目は、信じがたい事に首切り。
胴に別れを告げて転がり落ちる私の頭は、首無しの体の向こうに黒衣の女を見た気がした。
そして、私は四度目の目覚めを体験する。
世界は不審者でいっぱいだ。
再生天使を名乗り、私が死ぬ度に私を生き返しているなどと言う男。
崖の上から私を見下ろしていた、貌の無い女。
私の事故を聞きつけて駆けつけた、毒入りキャンディを差し出した男。
正面から私を刺したくせに、私の記憶には全く残っていない誰か。
そして、大鎌を抱えた黒衣の女。
信じられるものなど、何もない。
医者もあてにならない。
警察もあてにならない。
なら私は、何度殺されても生き返り続ける私だけを信じて、利用できるものは利用し尽くして、犯人を追いつめてやろう。
……その息の根を止めてやるために。